多頭飼いとは
「多頭飼い」とは読んで字のごとく、犬や猫などを数頭飼うことを指します。今回はワンコの多頭飼いについてのお話です。
現在一般的には1頭で飼われているコが多いのではないかと思いますが、単頭飼いと多頭飼いどちらが優れているとかどちらの飼い方のほうが不幸だということはないと思います。
ただし、犬によって向き不向きがあるのは事実です。
現在犬が1頭いるけど2頭目を迎えるかどうか迷っている、これから犬を飼うけれど将来多頭を視野に入れている、これから同時に2頭お迎えしたいと思っている方に、多頭飼いを始める前の大まかな流れと心構えをメインにお話していきます。
※現在飼っているコに子供を産ませて親子で飼いたいというパターンは今回考慮していません。
多頭飼いメリットデメリット
多頭飼いのイメージって、どんなでしょうか。ポテコ的には高速のサービスエリアや観光地で見かける、ベビーカーのようなカートに小さな子たちがぎゅうぎゅうに乗って楽しそうにしている…、インスタでかわいい洋服を着せて並んでかわいい写真を撮っている…という楽しいイメージです。
でもそれは表に見えているところで、じゃあ実際飼うとどうなんだろうかというのがあまりイメージできませんでした。
まず一般的に言われている多頭飼いのメリットデメリットを考えてみましょう。
多頭飼いのメリット
飼い主さんのメリット
喜び・楽しみが増える
1頭でも楽しいペットライフですが、頭数が増えると幸福感、充実感が増すと言われています。家族同然であるペットたちは1頭1頭性格もやることも違います。その違いを見て驚いたり、犬たちが一緒に何かをするのを見てうれしくなったりと、楽しみの幅が広がります。犬が増えると家族の話題も増えます。
2頭目のしつけが楽
これは1頭目がきちんとしつけられていれば、という注釈がつきますが、トイレのしつけやお座りなどのしつけが1頭目より入りやすいことが多いようです。
犬のメリット
社会性が身に付く
これも極端な犬嫌いなコや臆病なコ・攻撃的なコには当てはまらない場合もありますが、多くの場合は別に犬がいると共存していくための犬同士のルールや距離感を学ぶ事が出来、成長することが多いようです。
留守番時の寂しさ軽減・遊び相手ができる
1頭でのお留守番は苦手なコもいますが、別に犬がいるとそれだけで安心しますので分離不安症になったり、留守番時に泣き続けるという行動が減ります。トリミングやペットホテルに預ける場合なども2頭ですと不安が軽減されます。先住が平気な様子ですと2頭目も落ち着くのが早いです。
同時に2頭飼う場合のメリット
この場合は多くが兄弟犬やペットショップで同じケージにいた、などの理由になるでしょうか。
大体子犬を親元から離し家に連れてくると、寂しさで夜中しばらく泣いたり不安から体調を崩したりすることがありますが、同時に連れてくる場合はそれがかなり軽減されるようです。
ショップから来るコは夜泣きをあまりしないようですが、それでも1頭よりは環境の変化にも適応が早いと思います。
子犬時代から一緒にいるとほとんどの場合とても仲良くなりますし、単独飼いの期間がないので社会化もばっちりです。
多頭飼いのデメリット
飼い主さんのデメリット
出費が増える
当たり前ですが犬が2頭になれば単純に計算しても出費は倍です。トリミング、医療費、フード・おやつ・おもちゃ・洋服etc、急に大きな病気をしたりけがをしたなどの非常時に使えるお金はあるか、をよく確認してください。
手間が増える
トイレの掃除やご飯の準備、お散歩、ブラッシングや歯磨きなどのお手入れ時間…、2頭目を迎え入れた直後などは場合によっては、先住犬がトイレが出来なくなったり、体調を崩したりして、新しい犬と先住犬のお世話で病院に行きまくりなどてんてこ舞いになることもあります。
成犬同士の場合は、それに加えて喧嘩やもめごとが起きないかをより注意深く見ておく必要があります。去勢していないオスとメスの組み合わせになってしまう場合は、去勢や避妊が済むまでは同じ部屋に入れないなどの配慮も重要です。
場所が必要
就寝時、ケージは別々の方がいといわれています。また、他のコと同じトイレを使ってくれないコもいます。リビングにワンコ用のベッドを置いていれば二つ必要になるかもしれません。一緒に寝てくれる場合でも、一回り大きいサイズにしないと入らないかも…。
直接ワンコが使うもの以外でも、トイレシートやお散歩グッズ、フードやおやつの予備、置いておく所が必要です。
犬のデメリット
慣れるまでストレス
ずっと1頭で愛情を独占していた先住犬にとっては、あとから来た犬は脅威です。
性格によっては受け入れるまで時間がかかったりするでしょう。臆病なコや老犬には強いストレスがかかるかもしれません。興奮したりパニックになったりすることも考えられます。しかし多くの場合時間が解決してくれます。
同時に2頭飼う場合のデメリット
しつけが大変
しつけの入った1頭目がいるのとは違い、同時に2頭にしつけをしなければならないとなると、かなり大変となります。1頭にトイレを促していると別のコがジャー!ということも。子犬は気が散りやすいので、しつけが入りにくくなる場合もありそうです。
また、1頭ですと飼い主さんとのコミュニケーションが密になるのに対して、多頭は犬同士のつながりも強くなりますので最初から2頭ですとすこーしだけライトなお付き合いになるかもしれません。※犬によります。
多頭飼い前に確認するべきこと
多頭を管理するだけのお金と時間が確保できるか
先程も出ましたが犬が2頭になると出費は2倍、手間と時間はもっとかかります。
犬のための余剰金を準備したり、散歩や世話の分担を家族とできるかきちんと相談しましょう。
先住犬が多頭飼いに向いているか
本来何よりこれが優先されるべきでしょう。
- トイレ等のしつけが完璧でない
- 極端に臆病
- 飼い主に依存している
- 他の犬に対して攻撃的・他の犬が嫌い
- 老いすぎている
上に挙げたような性格の先住犬がいる場合は過度なストレスが人にも犬にもかかる場合がありますので慎重に判断してください。
特に、「他の犬に対して攻撃的・他の犬が嫌い」は要注意です。後から来た犬に対し吠え続けたり、マーキングが激しくなったりと、家庭生活に多大な影響が出ることにもなりかねません。新入りに怪我をさせるため、同じ部屋で飼うことができず、散歩も別々といった状態になってしまうこともあるようです。
多頭で楽しく生活しようと思ったはずが、それでは本末転倒です。
多頭飼いのキモと言っても過言ではない先住犬の性格の見極め。多頭を視野に入れて今一度愛犬をよく観察してください。散歩中に他の犬に会った時の反応、可能であればドッグランに行ってみたりするのもいいと思います。
ここで、ちょっとでも「あ、このコは向いてないな」と思ったら、残念ですが多頭飼いはあきらめた方がいいかもしれません。
サイズと性別
先住犬の性格が大丈夫そうなら、次に考えるのがサイズと性別です。
極端にサイズが違う場合、弱いほうが怪我をしないよう注意を払う必要がありますし、年齢差が大きい場合は、老犬にストレスがかかりすぎないよう分ける場所などを準備しておかなければなりません。
とはいえ、年を取って来て元気がなかったコが若い犬に刺激を受けてはつらつとしてくる場合もあります。
性別の組み合わせ、性別というよりは個体の性格の方が重要ですが、それでも一番無難なのはオス×メスと言われます。
この場合繁殖に十分注意してください。
以前知り合いの家でオス×メスの2頭飼いをしていましたが、そこのおうちでは去勢・避妊共にしておらず、メスがヒートの期間中オスを寄せ付けず流血沙汰になりそうだったので、メス犬がダイニングテーブルの上に避難し続けていました。
オスもその期間中鳴きっぱなし興奮しっぱなしと大変だったようです。繁殖の予定がないのであれば、必ず去勢・避妊をしてください。
犬同士の相性が悪い場合の対応を考えておく
万一、先住犬が新しい犬を受け入れなかった場合、気長に待つことができるか、別の部屋に分ける事が出来るか、その場合でもきちんと最後まで飼う覚悟はあるか。トレーニング等に出して改善の努力ができるか。非常にお勧めしにくい方法ですが、失敗したら知り合いや親戚などに里子に出すなどの回避方法は可能か。
捨てる、保健所に行くなどの最悪の方法を取らないようきっちりと考えておいてください。
犬と人との相性
また、何頭もの犬がいると、どうしても自分に合う犬、少し合わない犬、というものが出てくることがあります。それに対してもきちんと飼えるかというのは確認してください。
1頭しかいないと多少合わなくとも「そういうもの」と割と思いますし、余裕もあるので対応も可能なのですが、何頭もいてひいきの犬とそうでない犬の差が顕著になってしまう場合があります。その時にあまり会わない方の犬を手放したり、捨てたりといったことをせずに最後まで責任をもって飼えるか。邪険にしたり虐待をしないか、よーく考えてください。
新しい犬を迎えるとき
仔犬をお迎えする時
ペットショップから迎えるか、ブリーダーさんの家に行くか、それとも保護施設や団体からもらうのかによって変わってきますが、まず一番気を付けたいのは、真夏にお迎えする場合です。
箱やキャリーに入れての移動になると思いますが、熱中症や脱水症状に必ず気を配ってください。ワンコを受け取ったらそのあとどこか遊んで帰るなどなく、速やかにお家へ向かいましょう。
気温が高い日にはお水、保冷剤などの準備をしておきましょう。車で移動の場合はエアコンを強めにかけてください。
また、先住犬の匂いのついているものなどを持って行って、一緒に置いておくといいかもしれません。
引き合わせ時
※一般的に新入りが子犬の場合ワクチン接種が済むまでは先住との接触はさせないようにと言われているようです。
しかしポテコは社会化の観点からも、犬同士の関係性の構築の観点からも先住犬がワクチン・フィラリア等の予防をしっかりしているのであれば早くから一緒に過ごさせても問題ないと思っています。かかりつけの獣医さん等にご相談の上、飼い主さんのご判断で決定してください。
新入り犬が子犬の場合
・ケージやサークル内に入れ、先住犬は外から対面させること。
・子犬の匂いをケージ越しにかがせたりして、お互いに落ち着くのを待ちます。(吠えたり、とびかかるそぶりがある場合は落ち着くまで子犬を外に出さないでください。)
・落ち着いた様子になったらケージから子犬を抱きあげ、先住犬に匂いをかがせます。それでも大丈夫なようなら監視下で子犬を離し、犬同士で自由に匂いをかがせたり遊ばせたりしてOKです。
※数日は飼い主さんがいない所で2頭を自由にしないこと。双方にストレスがかかるので、時間を決めて触れ合わせ、それ以外は子犬はケージ、サークル等に入れて慣らしていく。
新入り犬が成犬の場合
成犬同士の場合は、保護団体や保健所からの引き取りが多いと思いますが、飼う前にまず何度か会わせて相性を見たほうが良いです。
保護犬などですとトライアルや飼い犬を連れて譲渡会に行くなどができる場合もあります。
実際おうちへ新入りを連れていくときには、トレーナーさんや訓練士さんについてもらえればなお良しです。
また、犬は自分の縄張りに他の犬が入ってくることを嫌うため、いつも先住がいる部屋に新入りを連れていくと激怒する場合があります。
一旦外であいさつを済ませて同時に入ると割とスムーズにいくことがありましたので成犬同士の場合はそちらをお勧めします。
いざ多頭飼いライフ
先住と新入り、どちらを優先する?
なんでも先住犬優先が鉄則…と言われています。しかし個体差があまりに違うため、一概に言えないというのが個人的感想です。
先住が年寄りだったり、新入りの方が年上だったりした場合、性格的に新入りの方がリーダー気質な場合は新入りを優先した方が良い場合もあります。また、新入りが仔犬だと、しつけや世話などで必然的に仔犬に構う時間のほうが多くなります。先住犬の元気がなくなったり、焼きもちを焼く様子がないかなどはよく目を配りましょう。
仔犬は一日中フリーにすることはないはずなので、新入りがケージやクレートで寝ている間は先住犬をかわいがって相手するなどのケアは必要です。
犬の順位付けは?
柴犬のような日本犬は順位付けをきっちりしがちですが、洋犬は割にアバウトなコも多いので臨機応変対応で行ける場合もあります。基本的には犬同士が勝手に決めるはずです。
そもそも犬同士に順位はなく、飼い主が1位でゆるぎないのなら犬の順位はどうでも構わないという意見も見かけます。ポテコはこの立場です。
さらに家庭内でボスがいるかどうかによって順位も変動します。我が家ではポテコがボス、ミロが2位(と本人は思っているがたぶんポテコ以外は皆横並び)、夫と梵が同じくらいなのですが、ポテコが出かけると夫が1位に浮上します。
絶対強者が群れにいる場合、不在になると犬同士で喧嘩が始まる場合がありますので飼い主がいないときの犬の様子も把握するようにしてください。争いが起きるようであれば個別のケージやサークルに分けて外出するなどの対応が必要です。
おわりに
だいぶ長くなってしまいましたが、多頭飼い、難しそうと思われましたか?
失敗したときの事や、愛犬がストレスで体調を崩したら…と却って心配が増したかもしれません。気にすることが多すぎて、やめようかなーと思ったりしませんか?
でも、きちんと愛犬を見て別の犬とうまくやっていけるかどうかを考え、それでも大丈夫と思えたならきっと多頭飼いはうまくいきます
「うまくいく」の基準ですが、多頭を希望する方の多くは、2匹(以上)が丸まって一緒に眠る、や、いつも一緒で仲良く遊ぶ。を想像しているのではないかなーと思いますが、そこまで行かずとも、飼い主無しで同じ部屋に離していても、犬同士がケンカせず問題を起こさないの時点で成功だと思います。ちょっとがっかりするかもしれませんが、そんなものです。
そしておうちの中ではイマイチ仲良くないなーと思う犬同士でも、外に行けば実は群れの仲間としてお互いを認識している場合もよくあります。そうなっていたら多頭飼い大成功です。
我が家のミロは家の中では基本スルーですが、やはり外では梵に対して仲間だと思っているようですし、大嫌いな病院に行くときなども梵がいることで少しですがストレスが軽減されているように見えます。
梵が隣で寝ようとすると立ち去りましたが、最近はベッドに顔を乗せるくらいならOKのようです。
夢であった「並んで写真」が達成できる気はしませんが(笑)、ソファーに座ってTVを見ているとき、左右にぴったりくっついて眠る犬たちの顔を見ていると、本当に癒されます。苦労は2倍、でも喜びはきっともっと何倍にもなっているはずです。
多頭飼い、可能な環境であればぜひチャレンジしてみてください。
下記記事は実際我が家が多頭化したときの体験記事です。是非合わせてご覧ください!
前回の記事で、一般的に言われる多頭飼いの注意点などを書いてみました。 今回は実際我が家がどうだったかというお話です。 理想と現実はだいぶ違うのがよく分かります(笑) そして、理想通りにいかなくとも割[…]